+瀉血の手順

大まかな瀉血の手順


まずざっくりと瀉血の手順を述べる。

  1. (駆血帯を結ぶ。)
  2. 針の準備。
  3. 血管を探す。
  4. (穿刺箇所を消毒する。)
  5. 針を刺す。
  6. 血を抜く。
  7. 駆血帯を外す。
  8. 針を抜く。
  9. 止血する。
  10. 後片付け。

括弧書きになっているのは必須ではない手順。

1. 駆血帯を結ぶ


必ず結ばなければならないわけではないが、駆血帯は血管を探しやすくするためにも血を多くだすためにもなかなか重要なものである。ここでも書いたが、駆血帯には色々あってゴムチューブ単身やそれにピンチがついたもの、ワンタッチタイプなどがある。結び方より前に結ぶきつさについて書いておくと、あまりきつすぎるのは禁物だ。腕が痺れてきたり、酷いときは壊死が起こったりする。そもそも動脈の勢いまで弱めてしまったら血があまり出なくなる。きついほど血の出る勢いは増すがほどほどに。腕に縛るときは、縛ってから手首の脈をとってみるとよい。脈が触れなかったり、弱まっていたりしたらきつすぎだということである。"ほどほど"でも少しきつめに結んでいる場合は、長く駆血帯をしたままだと点状出血ができやすくなる。30分ほど縛ったままでは、針の刺し口やまだ治癒しきっていない傷(薄い褐色のままのものなど)の周囲に、細かい赤い点々のような内出血ができる。3日も放置しておけば跡形もなく消えるので問題はない。
駆血帯を結ぶ位置は、穿刺する箇所より5cmほど中枢側(体の中央寄り)にする。遠すぎても意味はないし、近すぎると皮膚が引っぱられて穿刺を妨げる。
ゴムチューブでしかない駆血帯は慣れるまで結びにくい。特に瀉血するときは片手で結ばなければいけないことも多く、最初のうちはかなり難しく感じるだろう。いっそピンチつきなど他のものを買ってしまえばいいといえばそうなのだが、ゴムチューブのものはかなり安い。それに僕がそうしているのだけれど、化学実験用の連結管として兼用することもできる(笑)。
では片手しか使えない状況ではどう結べばいいのかということをペットボトルを腕に見立てて説明してみることにする…。左腕に結ぶ場合。

 

まず駆血帯を腕に巻き付ける。末梢側とは掌側、中枢側とは肩側のこと。ペットボトル画像では駆血帯の上下が逆になっている。右は脳内変換ガイド...

二本が交わっているあたりで上に来ている方を指で押さえる。このとき矢印の向きに歯でくわえてもう一本を引っぱっている。


歯で引っぱっている方は緩めない。上に来ている方を人差し指で、下に来ている方を親指で一緒につまむようにする。


そのまま上に来ている方を下にくぐらせる。まだ歯で引っぱっている方を緩めてはいけない。


もう歯で引っぱっているのは離してよい。先ほどくぐらせた部分を、取れないように矢印の向きにちょっと引っぱって固定する。


完成。外すときは矢印の向きに引けばすぐほどける。

きつく結んでも外れやすかったら、駆血帯の表面を少し湿らせると摩擦係数が上がって取れにくくなる。10回くらいも練習すれば一発で結べるようになるので根気よく練習しよう。

普通に(病院での採血などで)結ぶ手順も同じ。全ての画像を右方向に90度回転し、歯で引っぱるのを左手で引っぱるのに変えればいいだけだ。


2. 針の準備


針のスタンバイ。中が詰まっていないか?針先は鈍っていないか?使い回しの場合、消毒はしたか?これくらい確認しておけばまあ問題はない(と思う)。

3. 血管を探す


駆血したところより末梢寄りに良い血管がないかを探す。どう血管を選ぶべきかはこの記事に詳しい。

4. 穿刺箇所を消毒する


これも必須ではないが、できればアルコール綿で穿刺する箇所を拭く。正しい消毒の仕方は、中央から外側に向かって渦巻きを描くように拭く。こうすると中側ほど綺麗に消毒されることになる。"必要ではない"というのは、皮膚の上に生息する細菌が皮膚の下では生息できないとする見方があるためで、体外と体内ではpHから何から違うのでたとえ穿刺によって体外の細菌が体内に入り込んでもまず微量であるしすぐに死滅してしまうはずだという。但ししっかりした証明や裏付けがあるわけではないので、やはり消毒しておいた方がいいだろう。

5. 針を刺す


血管を狙い定めて刺す。挿入角度が浅すぎると表皮を掬うだけで血管に到達するまで長く入れなければならないし、角度が急すぎると血管を破ったり神経に当たったりしてしまう。角度は10°とか20°とか30°とか色々言われているが別に適当でいいし、血管の深さによって臨機応変に変えた方がむしろいい。皮膚の薄いところ(手首など)でかなり高く盛り上がっている血管ならすぐ皮膚の下にあるということなので挿入角度は浅めに、目に見えないが触れてやっと判るくらいの血管なら45°くらいの角度をつけて入れる。針先のカット角度に合わせることで痛みを軽減するという言い方もあるらしいが、痛みなんてどうだっていい、当たるか当たらないかが全てだ。

6. 血を抜く


見事血管に当たったら一瞬で血が出てくる。出てこなければ血管に当たっていないので刺しなおすか刺したまま探す(参考)。太い針(18G以上)なら「入ったかな」と思う間もなく血が勢い良く吹き出してくるので、周りにはタオルや新聞紙などを引いておくといい。面白いくらい血が抜ける。細い針でも滴々しているのを放っておけば意外と結構な量になる。
血の出る勢いが弱まってきたら、手を握ってみるとかなり改善される。それを何度か繰り返して手を握っても勢いがあまり変わらなくなったら、針はもう詰まりかけだ。中で凝血している。だが放っておけばそれでもまだ暫くの間出続けるので(1秒2滴くらいのペースになっても30分以上は余裕で行ける)、開いている手で別のことができるようだったら放っておいて血を出させておけばいい。(実際僕は足首から22Gで抜く時、手にパソコンや携帯を持ってネットなんかしている!)
個人差はあるものの、いきなり500mLほど抜くと失神する可能性がある。元々貧血なら更にその量は少ない。失神すると血がそこら中に飛び散ったり、ぶっ倒れる時に頭をぶつけたり、折角血を入れていた容器を倒して水浸しならぬ血浸し状態になってしまい色々と面倒だ。10分以上気を失っていることは稀で大抵はすぐに回復するが、血はまだ足りていないのでその後もちょっとした動きで失神する可能性が高い。低い体勢から急に立ち上がるなどはもってのほかで、それどころか少し急ぎ足で歩いただけで倒れることもある。僕は生来貧血気味だったのが瀉血しているがために今では椅子からばっと立ち上がると倒れそうになったり、10mほど早足で歩くだけでクラクラしたりする。道端で失神しても困るので、一度に抜く量は300mL以内に抑えている…。

7. 駆血帯を外す


針を抜くより前に駆血帯を外すのは鉄則。太い針を使ったのであれば、針を抜いたあとから血が文字通り吹き出してくる。そうでなくとも内出血(青タン)がすぐさまできる。また、皮膚の下に漏れ出した血液が溜まって硬くなってしまい治るまで針が刺しにくくなる。青タンを作りたいのでなければ必ず針を抜くより先に駆血帯を外そう。

8. 針を抜く


普通に引っこ抜くだけである。抜く速度が遅いとちょっと痛いが、物凄く痛いわけでもないのであまり気にしなくても良い。病院などで採血する時には針の根元をアル綿で抑えてから抜いているが、どうせ周りが血塗れになっている自傷瀉血の場合にはそうする必要はない。針を抜いたあとから出る血の量は針の太さや刺した角度等によって影響され、多ければ問題だというわけでもない。

9. 止血する


針を抜いた後はしっかり止血する。ティッシュなどで、できればアルコール綿など清潔なもので最低1分は強く抑えて止血する。病院では3分や5分と言われるが、18Gなどを刺した場合は5分は必要だと思う。皮膚の傷口はすぐに塞がるが、抑える目的は"止血"なので血管の傷が塞がるまで抑え続けていなければならない。そうしないと逆に皮膚の傷が塞がれたことで皮下に血が漏れ出し、結局内出血ができてしまうことがある。


10. 後片付け


楽そうに見えて侮れないのが後片付け。血液はなかなか厄介な液体である。蛋白質で構成されているので、高温に曝すと変成して固まってしまう。普通の汚れは温度が高いほど良く落ちるが、血液がついた衣服などは40℃以上の水で洗ってはならない。絶対に落ちなくなる。乾いた血も洗い落とせる見込みはほとんどないと言ってよい。
血の付いたティッシュなどがあまりに大量になるのでトイレに流したら詰まりそうだと思って焼却処分しようとしたことがある。しかしこれが不思議なもので、血の付いていない部分はよく燃えるのに血の付いた部分は全く燃えない。火を点けなおしても燃えない。焼却処分もうまくは行かない。
血は凝血していても、血餅の体積が大きすぎなければトイレにそのまま流してしまうのが良い。ペットボトルなどに入れたままゴミとして出しても大丈夫といえばそうだが、見つかったら警察沙汰になりそうだ。普通、瓶一本満タンの血液を見て第一に瀉血を思い付くような一般人はいない。
地面に飛んだ血飛沫も血を抜いている間に凝血しているので、強く拭いたり水で濡らしたりしないと落ちにくい場合がある。材質によってはタワシやブラシで擦ってさえ全然落ちないものがある(我が家のトイレの蓋がそう)。畢竟液体であるのでかなりの範囲に飛び散っていることがあり、一滴一滴拭き取っていかないとならない。同居人がいる場合には尚更証拠隠滅に精を出すべきで、家族や何かにバレた日には悲惨な運命が待ち受けている。瀉血した方にとっては、数百mLの血を処理して0.1mLにも満たない血痕を見逃してしまうわけだが、他人はその0.1mLもない血痕によって全てを立証してしまうのだ。刑事裁判じゃないんだから仕方ない。後始末には念に念を入れよう。

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